優しい完璧

もともと自己肯定感がだいぶ低かった私。『なんでも出来る完璧な自分にならなくっちゃ』と理想の自分に向かって生きる、そんな人間だった。でも何かを成しても、なんだか常に満たされない状態も感じていた。

では、どう在るのがベストなのか? どれが本当の自分なのか?

そんな自問自答を人生を通して続けたきた私。でもある時ふと「…この問い、もうやめようかな。」と、あれだけ答えを出すことに躍起になっていたところから、スッと離れられたタイミングがあった。(多分、自問自答が行き着くところまで行き着いたからだと思う)

そこで気付いた事があった。

この『何でも出来る完璧な自分』は自分へのスパルタ教育じゃないか、と。でこぼこなんて認めない、オールラウンダーこそが正義!と言わんばかり。しかも変わった自分を褒めもせずに。私は自分の個性を無視して、何でもできる、そんな『完璧』な『誰か』になろうとしていたんだ、ということに。

その時私はやっと、自分が自分にしてきた悲しい行為の数々を、俯瞰して眺められる所に立つことが出来た。まさに『木を見て森を見ず』。こんな簡単なことに、私はずっとずっとずーーっと気付けなかったのだ。(頭の理解ではなく、腑に落ちるというヤツ)

『誰がなんと言おうと、もう十分頑張ったじゃないか。その頑張りを一番近くで見てきたじゃない。ダメなところも、ダメなところをダメだと思ってしまう自分さえも良いんだ。このままで良かったんだ。だってどう足掻いても、全てが私なのだから。』

私はずっと誰から褒められたかった。それは周りの人からだと思ってた。でも違った。本当はずっと『厳しいスパルタの自分』から『頑張ったね』と褒めてもらいたかったのだ。

私の中には小さい頃から、自分の中に相反するものが同居している感覚がある。みんなも同じなのかどうかはわからないけれど。繊細と大雑把、純粋とダーク。この対極の感覚をどう扱っていいものか困り果てていた。

自分のダークな部分は、一般的に忌み嫌われる事が多いと思う。私ももれなくそうだった。でも本当はこの両方とも私。なのに一方だけ嫌っていたのでは、その嫌っている方が拗ねてしまう。私のダークな部分は盛大に拗ねて『かまってちゃん化』していたのだ。(見てほしくて注意を引こうとするやつみたいな)それが冒頭で話した『満たされない感覚』を生み出していたのかも知れない。

完璧は『何でもできること』じゃない。混沌や矛盾も含めた全てが私。その『ごった煮状態』こそが完璧の姿なのではないだろうか?

そう思った瞬間、唐突に胸にたくさんの感情が込み上げてきた。喜び、悲しみ、怒り、後悔、懺悔。ありとあらゆる感情や事象が、走馬灯のように駆け巡った。そして気付いたら、胸の辺りがスッと軽くなっていた。一瞬の出来事だった。

それからは自分へのダメ出しが、嘘のように小さくなっていった。

緊張しいも、繊細さも、意地っ張りも、ダークな一面も、どれもこれも自然な私。無理やり変わるのではなくて、ベストタイミングで変わるのだなと感じた。

この出来事のように、時がくれば自然と変わっていく。今変われないのなら、きっとそれが今のベストだ。そのままでいい。なぜなら、無理して変えようとしていた時は頭(エゴの命令)に心が嫌だと抵抗して、全く変わらなかったから。

嫌だと思う部分があっても、それが変わっても変わらなくても、結局のところ私は私のことを完全に見捨てることができないのだ。だって本当は大好きだから。そう、実は大好きだったのだ。

自分が大好きじゃなかったら、こんなにも自分のことで悩んだりしない。苦しんだりしない。本当の自分って何?なんて求め続けたりしないはず。

見捨てる事ができないなんて、なんだか親が子を想うような、そんなまなざしに似ているなと思った。

委ねるという在り方、それはまるで”自然”のようだ。

四季という絶え間ないリズム。

月の満ち欠け。

目には見えないが、絶えず確かに存在する”流れ”。

この大きな流れのように、ただ今この瞬間にある自分の全てを許していった時、奇跡のような出来事をいくつも体験した。エゴの想像を遥かに超えた、パズルのピースがカチッとはまったような瞬間だった。

どんな葛藤も矛盾も混沌も、たとえ今がどんな状態でも、『全ては完璧』でしかなかった。だから、流れに委ねて生きればいい。今を噛み締めれば良い。とっ散らかった全てをただ見つめながら。

『この私でいいんだ。ああ、これなら、生きることも悪くないかも。』そう思えて、なんだか少し泣けた。

完璧の本当の姿が、あまりにも優しいものだったから。

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今乃かおり
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